母が見届けられなかった幸安の出入り
どんな伝承か
幸安の母さきは、幸安が幽界へ出て行く移り変わりの瞬間をこの目で見届けたいと思い、空を行く夜には目を離さずに気をつけていた。しかし、ちょっと目をそらしたすきに幸安は消え失せ、いつの間にか帰ってきて座っているのが常で、行き来の境目をはっきり見たことは一度もなかったという。参沢宗哲の聞書『幸安仙界物語』の別の箇所に、母自身の言葉として書き留められている話である。
原典より
此時母人さき申候には、私幸安が幽界へ出る移替りを見留めたしと存候て、空行の夜は眼を離さず気を付け居候へども、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。