浅間の神に仕える亡き祖父の霊
どんな伝承か
十二日の神々の宴には、春の母方の祖父早川路長翁も浅間山大神の供をして現れた。翁は古道を志して神を敬い、とりわけ浅間山の石長姫命を信じて、死んだら必ず浅間山へ行くと言っていた人で、前年の四月に七十余歳で亡くなっていた。翁は春に、大きくなったな、自分は今は浅間の神に仕えて安らかにしているから案じないよう子らに伝えてくれと言い、富士山の神に仕える翁の妻も供に来ていて、これが孫かと喜んだという。春が生まれる前に死んだ人なのに、春の語る顔つきや口ぶりは生前の翁とまったく違わなかったと父は記している。
原典より
又翁の妻は富士山の神に仕奉て居る由にて、今日も御供に来り居て、春女を見て此が孫なるかと云って悦ばれしとぞ。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。