難産続きの母の安らかな出産
どんな伝承か
十八日の明け方、これまでお産のたびに苦しんできた春の母が、今度はやすやすと男の子を産んだ。夜が明けると長壁大神の侍女が来て、お産はあったかと尋ね、春が神々のおかげで今朝安らかに男子が生まれたと答えると、その子は産毛を剃らずに育てるようにと言った。その日のうちに侍女は一貫文の札、柿七つ、餅十ほどを次々に届け、明日は宮へ参るようにと告げて帰った。翌十九日、祖父の景山と早川竜之助が春を連れて宮へ参ると、春だけが大神手ずから酒と鯛や鯉、まぐろの刺身を賜ったが、二人には何も見えなかったという。
原典より
夜明けて侍女来て、春女に、産はありしやと問はるる故、神等の御霊に頼て、今曉安らかに男子を生めりと申すに、其子はうぶ毛を剃らずに育つべし、といはれしとぞ。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。