浜坂の松林でサンカが沸かした湯
どんな伝承か
鷹野弥三郎の『山窩の生活』には、新聞連載の折に読者から寄せられた手紙が十通ほど収められている。その一通は、福井県坂井郡浜坂村、いまのあわら市浜坂に住む汐越の松と名のる男性からのもので、石川との県境に近い海岸の松林の丘に、三十年ほど前には春と秋の二か月ほどサンカが来て住んでいたと記す。入浴の際には地面に穴を掘り、油紙を継いで袋状にしたものを穴に敷き、鍋から湯を移して浸かっていた。珍しいので村人と一緒に見物したという。純粋な焼き石湯とは少し違うが、その変形とみることができる。
原典より
定住民も焼き石湯を沸かしていた第3章 山中深くで贋金をつくるある漂泊民一家との出会いキャバレー勤めから再婚へ帰郷と夫の急死夫の実家への旅贋金つくりの集団がいた「江戸川の社長さん」の出自—— 村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。