老牧師が説いた遊離した魂の危険
どんな伝承か
語り手は、夜中に座ったまま念を送っただけで半身不随の人を歩けるようにした。得意になって、自宅の近くの高輪教会へ行き、年寄りの牧師にその話をした。すると牧師は、素人がそういうことをしてはいけないと戒めた。下手をすると術をかけた側が最悪の事態に陥ることがあり、体を離れた魂が帰りそこねて、症状としてはポックリ病で片づけられてしまうというのである。老牧師自身も若い頃は伝道の助けにと病人をよく治したが、来る者は病を治してもらいに来るだけで、かえって伝道の妨げになると知ってやめたという。語り手も、ぽっくり死ぬのはつまらないと、以後この種の話を吹聴しないことにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・昭和(戦後))
西丸震哉『山とお化けと自然界』を篇単位で収録。完全装備で岩小屋前を通過する遭難者の幽霊目撃、木曾御岳の人魂たち、カラステングがタコを食う、亡き兄との交信やテレパシー(死者との通信)、幽霊の仮説・怪談といった山岳怪異譚を軸に、呪い殺しの実験・雨やみの術・日蝕と雨やみの術などの呪術、山の昆虫・メスネコの生涯・ヤマネとムササビ・ミミズク等の自然観察、酒・山旅・会津の秘境/栗駒山密林などの紀行随想を収める。