老牧師が説いた遊離した魂の危険
どんな伝承か
語り手は、夜中に座ったまま念を送っただけで半身不随の人を歩けるようにした。得意になって、自宅の近くの高輪教会へ行き、年寄りの牧師にその話をした。すると牧師は、素人がそういうことをしてはいけないと戒めた。下手をすると術をかけた側が最悪の事態に陥ることがあり、体を離れた魂が帰りそこねて、症状としてはポックリ病で片づけられてしまうというのである。老牧師自身も若い頃は伝道の助けにと病人をよく治したが、来る者は病を治してもらいに来るだけで、かえって伝道の妨げになると知ってやめたという。語り手も、ぽっくり死ぬのはつまらないと、以後この種の話を吹聴しないことにした。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。