迎えに来た二つの人魂
どんな伝承か
小学三年生の頃、東京・青山の電車通りへ買い物に行く女中について歩いていた西丸震哉は、夜八時ごろ、大病で臨終が近いという家の二階の窓から橙黄色の楕円形の光の玉がスーッと出てくるのを見た。続けてもう一つ出たが、女中は悲鳴をあげて逃げ帰ってしまった。玉は前の家の庭の檜の間を抜けて東の方へ飛び去り、その家の老人は翌朝亡くなった。父はこれについて『先に死んだ婆さんが迎えに来たのだろう、爺さんが一人では迷子になるので二つ出たのだ』と語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉が昭和四十七年に著した随筆集で、一冊の予定を前後編に分けたうちの後編である。ニューギニアやニューブリテン島の未開部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続き、幽霊についての自説、自身や身内が出会った怪談、テレパシー・呪い殺し・雨やみの術の実験談を収める。「原始人」「幽霊」「テレパシー」の三部からなり、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。