調教場の塀の前で消えた赤い和服の女
どんな伝承か
昭和四十七年の夏、小倉競馬場の馬丁宿舎に女の霊が出たという話は警備の側にも伝わっていた。その一週間後の七月九日の深夜、ガードマンの皿良藤雄さん(二十五歳)が定時の巡回で北側の調教場の前へ来ると、灰色のコンクリート塀のそばに、赤い和服に長い髪を垂らした水商売風の女が立っていた。数歩近づいて足が無いと分かったとたん、女は力なく手招きし、警笛を吹くとその場でかき消えた。同僚と引き返しても姿は無かった。皿良さんは翌日から熱で寝込み、そのまま勤めを辞めて郷里へ帰ったという。宿舎には魔除けの札が貼られ、祈禱師のお祓いも行われた。馬場のあたりには、江戸時代に水争いで殺された権太郎の墓があったと伝えられる。
原典より
* 現代に祟る古武士の怨念* 古墳に眠る死者の怒り* 呪われた土地と屋敷* 守護霊に守られた人々* 四次元の世界に住む女* 「死神」を見た人たち* 死の瞬間とその後の世界—— 日本の四次元(鈴江淳也・心霊・四次元・1973年(昭和48年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の四次元(鈴江淳也・心霊・四次元・1973年(昭和48年))
『日本の四次元』は、鈴江淳也が昭和四十八年に著した超常現象の取材記である。幽霊の出る家や競馬場、古武士の怨念、守護霊、心霊写真、新幹線の四次元地帯、心霊治療、物品引き寄せ、てのひら療法、比婆山の怪獣やツチノコ、死後も占う易者犬などを、当事者を訪ねて聞いた話として記す。「幽霊と怨念の世界」から「動植物の驚異」まで六部に分け、あとがきで大陸書房刊『日本の奇談』『現代の怪奇』に続く第三弾と述べ、問い合わせ先を挙げる。