死んだおかみが客を見送る繩手の角
どんな伝承か
京都の料理屋福亭のおかみは、長くひいきにしてくれたガクさんという客を大事にしていた。おかみが亡くなった後のある晩、帰っていくガクさんを、死んだはずのおかみが繩手の角まで見送りに出て、さいならとはっきり言ったという。若い芸妓の小雛は、そのとき自分も後ろから付いて行って間近でその声を聞いたと請け合い、福亭ではいつもそう言っていると語った。大事な客だったので死んだ後も念が残ったのだろうと芸妓たちは噂し、ガクさん自身も近ごろよく夢を見ると話していたという。
原典より
あのおかみさん長いことひいきにしとくれやしたガクさんちうお客さんがお帰りやすのを送って、繩手の角まで出て『さいなら』まではっきりいうてやはったそうにおッせ。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。