螢が群れ飛ぶ入鹿の首塚
どんな伝承か
飛鳥には、蘇我入鹿の首を葬ったと伝える首塚がある。ひっそりと孤立して立つ暗いその塚は、〈呪〉という文字の形そのもののようにも見えるとされる。夏には今でも、この塚のまわりを螢が群れ飛び、小さな光をともしたり消したりするといわれ、その螢の光は同時に魂の火でもあると受け止められてきた。戦で死んだ者の首を葬ったという首塚の伝説は各地にあり、これもその一つである。
原典より
夏には、飛鳥の首塚をめぐって、螢が、その小さな火を明滅させながら今に群れ飛ぶという。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。