女の手足を折り去った美しい男
どんな伝承か
『古今著聞集』によれば、仁和三年八月、平安京の武徳殿の東の松原に、顔かたちの美しい男が現れた。男は一人の女の手足を折り、頭を引きちぎり、さらにその亡骸まで持ち去っていった。人々は鬼の仕業に違いないと言い合ったという。同じ出来事は『今昔物語集』にも記されており、古くから語り継がれた鬼の話である。
原典より
仁和三年(八八七年)八月には、武徳殿の東松原に、容色美麗の男があらわれ、一人の女の手足を折り、頭をひきちぎり、その死体をもひきさらってゆく。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。