お仲の復讐に憑いた愛猫の霊
どんな伝承か
河竹黙阿弥の『有松染相撲浴衣』は、一般に有馬猫騒動と呼ばれる。有馬侯の奥方お巻に仕える召使のお仲が、身に覚えのない罪を着せられて自害し、その無念を晴らそうとするお仲に、お巻の愛猫の霊が乗り移って騒動が起こる筋である。これは宝暦四年に筑後の久留米藩有馬家の領内で実際に起きた騒動にもとづくという。舞台では、招くような猫の手と幽霊の手が一つに重なる幽霊手・畜生手の演出が見どころで、著者はこれを歌舞伎の幽霊表現の到達点とする。
原典より
このお仲に、お巻の愛猫の霊がのりうつって、騒動がもちあがるという筋であるが、これも、宝暦四年(一七五四年)に、筑後の久留米主有馬氏領で実際おこった騒動に基く。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。