常陸の浜に流れ着いた釜形の異船
どんな伝承か
著者が浮世絵の研究を志した二十二、三歳の頃に目にしたという江戸の随筆の記録を紹介する篇。享和三年三月二十四日、常陸国の原舎浜に、うつろで釜のような形をした奇妙な船が流れ着いた。胴の中ほどに釜の刃のような張り出しがあり、高さは約四メートル、幅は約五メートル。上半分は黒塗りで四方に窓があり、ガラスの障子は松脂で固められ、下部には上等の南蛮鉄の筋金が打たれていた。中には言葉の通じない二十歳ほどの女が一人いた。背丈は百五十センチほど、雪のように白い肌に長い黒髪を垂らし、名も知れない織物をまとって、小さな箱を抱えて誰も寄せつけなかった。船内には柔らかな敷物が二枚、菓子らしき物と練った物、見事な模様の茶碗が一つあったという。同じ出来事は『兎園小説』にも船の絵や見慣れない文字の写しとともに載る。幕府が外国船に神経をとがらせていた時代の記録であることから、著者は何らかの事実があったとみて、UFOの飛来を記した珍しい文献だと述べている。
原典より
大同小異の内容なので文章は省くが『兎園小説』の方には克明な船の絵が掲載されていて、どう見てもUFOとしか思えない。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。