佐渡の羽茂長者と盆景から来た少女
どんな伝承か
八百比丘尼伝説の本場である福井県の伝承の中に、一般の話とは大きく違うものがあった。諸国を巡る六部が佐渡の羽茂長者の家に泊まり、小さな石を盆に載せると霧が湧いて雨が降り、島の形に家や木々が現れ白椿が咲いた。夕暮れ、その盆景の鐘撞堂から少女が降りてきたのを、長者の老僕がこっそり袂に隠した。六部は宝との交換を断って不老長寿の霊肉を差し出し、騙し討ちにされかけると石を投げて逃げた。老僕の袂の少女は霊肉の包みに変わっていたが、家では娘の姿で出迎えた。娘は棚の霊肉を食べて十五、六歳のまま年を取らず、八百歳で若狭の殿様に寿命を譲って没し、八百姫明神として祀られたという。著者は宇宙人の伝説ではないかと考える。
原典より
黄昏時(その盆景の中の)鐘撞堂から下りてくる一少女がいる。—— 黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
黄昏綺譚(高橋克彦・幽霊・怪異体験・1996年(平成8年))
『黄昏綺譚』は、高橋克彦が連載をまとめ、一九九六年七月付のあとがきを付したエッセイ集で、吉田光彦の挿絵と組んだ画文集である。著者が体験し見聞きした分身や生霊、寺での怪異、前世、UFOなどの不思議と、史料や神話に残る怪異、宮澤賢治をゴッホの生まれ変わりとみる考えを語る。「この世に幽霊はいる」「不思議な話が史料や神話に」「宮澤賢治はゴッホの生まれ変わり!!!」の三部に分かれ、巻末にあとがきと丸尾末広の解説「黄昏るペン」を収める。