いくら射っても倒れぬ白服の兵
どんな伝承か
柳田国男と佐々木喜善がまとめた『遠野物語拾遺』には、日露戦争のころの白い軍服にまつわる話が二つ収められている。一つは、仮死状態に陥った兵の魂が白い軍服のまま故郷の遠野へ飛び、留守宅の母もその姿を見たというもの。もう一つが、白い服を着た日本兵は、敵がどれだけ銃弾を浴びせても倒れなかったという話である。川村邦光は、いずれの話でも白い軍服が死者や亡霊を思わせる装いとして働いており、とりわけ撃たれても倒れぬ兵の話には、恐れというより畏れに近い心情がひそんでいると読み解いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・1989年(平成元年))
『幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶』は、川村邦光が一九八九年に著した近代日本の民衆の心性をめぐる論考である。明治の「血税一揆」の流言、トラホームと〈迷信〉、狐憑きと精神医学、「脳病」「神経病」、座敷牢と精神病者監護法、芦原将軍や出口なおの神がかり、祖先教と靖国の霊魂の管理を、新聞記事や医学書、調査報告から読み解く。はじめにの後に三部と終章「近代日本と霊魂の行方」を置き、あとがきで結ぶ。