北の御殿の幽霊と白鳥の怪火
どんな伝承か
天正の初めごろ、今の栃木県塩谷郡の領主の息女が田島城主長沼盛秀の奥方に輿入れする際、化粧料として三依郷を贈られた。奥方はその六か村から上がる年貢で、下郷の奈良原という景勝の地を選び、北の御殿を建ててもらって優雅な別荘暮らしを送ったが、殿様のお成りは絶えてなかったという。年を経て北の御殿には若侍の幽霊が出るという噂が立ち、寄りつく人もなくなった。ある年の夏、御殿は怪火に見舞われて炎上し、燃えさかるさなかに大きな白鳥が炎から飛び立ち、煙に紛れて白雲へ渡り、南の方へ飛び去った。まぼろし御殿などと取り沙汰されたが、今は館跡も定かでない。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説(下郷町(編)・下郷町史)
『下郷町史 第5巻(民俗編)――伝説』は、会津の下郷町の町史民俗編のうち、町内の伝説を集めた第二節である。鏡沼の大蛇や二岐山のダイタンボウ、狼に食われた祖母、湯野上温泉猿湯の由来、高倉宮以仁王と桜木姫・紅梅御前の落人伝説、伊達政宗の戦の悲話、小野の長者と小野観音の金の鰐口などを収める。伝説を自然伝説・歴史伝説・信仰伝説に分け、各話に地名や供養塔・墓・文化財の現状を書き添えている。