赤井岳へ登る海の龍灯
どんな伝承か
龍灯は海中から怪火が現れて陸上へ移って来るもので、民間では竜宮から灯明が上がると言われる。磐城の国、平の赤井岳の龍灯は東北ではずいぶん広く知られている。実見した者の話によると、深夜十二時ごろ海中から忽然と一つの怪火が現れる。その色は白く、光は大星をあざむくほどで、水面から数丈の空中にかかり、たちまち消えてはまた現れ、集まって一つになり、散じて数十になる。やがて次第に陸へ近づき、川に沿って山麓に達し、さらに渓間を溯って山上の薬師堂の前の林の中を往来するという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。