気合一声で抜けた息子稔の虫歯
どんな伝承か
浜口熊嶽の一人息子の稔は、父の巡行に何度かついて行って施術を目の当たりにしており、その効き目を疑わなかった。稔自身も、虫歯を一本抜いてもらったことがある。両手をあごに当てるように言われ、父の気合の恐ろしさを知っていたので顔をまともに見られずにいると、「エイッ」という声とともに体がしびれ、その瞬間に歯がぽろりと抜け落ちたという。稔によれば、父の気合を浴びた者は身がすくんで息まで止まりそうになり、鬼のような形相で一喝する父の目を、誰ひとりまともに見られなかった。
原典より
自分の虫歯も一本抜いてもらったことがあるそうだ。—— 霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。