患者と聞けば顔色が変わった熊嶽
どんな伝承か
息子の稔によると、ふだんの浜口熊嶽は並の人以上に俗っぽく、褌ひとつで御殿の周りを歩き回り、一升の酒など軽く空ける大酒飲みだった。ところが書生が「先生、患者です」と知らせると、酒で赤らんでいた顔がたちまち白く変わり、病人の前へ出て行ったという。病気治しは一回ごとの真剣勝負で、鬼の形相で一喝した。何人もの若者を大学へやって一人前にし、金貸しと博打はひどく嫌ったが、人をもてなすことや地元の催し・計画への出費は、生涯惜しまなかったと稔は語っている。
原典より
褌一丁で御殿かいわいを歩きまわり、一升酒もよいところの大酒飲みの熊嶽であったが、ひとたび書生が「先生、患者です」と告げると、真っ赤な顔が一変して白く変り、病人の前にでていった。—— 霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。