八丈島の正月ことばと嫁が君
どんな伝承か
正月の三が日は不吉な言葉を口にせず機嫌よく過ごそうとするため、忌みことばが多い。八丈島では、魔性のものとされる猫をカワブクロ、死ぬことをクニガエ、月経をイトヒキ、僧をクロオトコと言い換えていた。俳諧に取り込まれている嫁が君は鼠を指す正月ことばで、宝井其角や神谷九品の句にも詠まれている。なぜ鼠に遠慮するのかは今では理解しにくいが、秋田・長野・岡山・長崎などには年末から正月にかけて鼠の年取りと称し餅や団子を供える習俗があり、鼠もまた霊的な動物として特別な警戒を要したのだと今野圓輔は説く。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。