屋敷神の前で神懸る八丈小島の主婦
どんな伝承か
八丈小島では、どの家も屋敷を守るために敷地の一隅に地主神を祭っている。この神はたいそう霊験があらたかで、境内に茂る木や草を切ったり折ったりすると、家族に祟って病や不幸が続くという。人々は恐れて丁重に扱い、手厚く祭ってきた。年の初めに家の運を占い、春先に農漁の無事と豊かさを祈り、家の建て替えの日取りや旅立ちの方角の吉凶をうかがうのは、いずれも家の主婦の役目である。自分では決めかねることがあると、主婦は昼なお暗い巨木の茂る小祠の前にひざまずいて一心に祈る。やがて力が抜けてもうろうとし、神懸りの状態に入って、夢うつつのうちに神の言葉を聞くのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点(桜井徳太郎・桜井徳太郎・歴史民俗学・1977年(昭和52年))
『霊魂観の系譜――歴史民俗学の視点』は、桜井徳太郎が一九七七年(昭和五十二年)に著し、筑摩書房から刊行した論文集である。昭和三十二年から五十年にかけて学会誌や雑誌、新聞に発表した論考を収め、民俗学と歴史研究の関係、郷土の民俗像の史的復元、古代のシャマニズムと憑霊、呪いの人形、怨霊から御霊への死霊観を論じる。後半で折口信夫の巫女観と柳田国男の祖先観を検討し、巻末にあとがきと初稿発表覚書を付す。