電柱に貼られた黒い手型
どんな伝承か
津軽地方では疫病が流行ると、人々は自分の手のひらに墨を塗り、その型を紙に写して電柱に貼る呪いがあった。弘前市桔梗野の笹田一男が寄せた資料によれば、東京から悪性の流感が押し寄せようとしていたころ、雪の積もった津軽の電柱には黒い手型がいくつも貼りつけられ、通りかかった旅行者を驚かせたという。横綱や女優のような由緒ある手ではなく、町に住む者めいめいの手のかたちである。著者は、流感を追い払うためというより、自分の身代わりを遠い電柱に置き、災厄をそちらへ引き受けさせる意図ではないかと推し量りつつ、地元の説明ではないので当て推量にすぎないと断っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。