上野を抜けて甲府の女のもとへ戻った男
どんな伝承か
甲府で母・藤江を殺されて逃げていた西本義直を追い、その子・山名道太郎が仇討ちに及んだ。だが道太郎に討たれたのは実は義直の弟・義次で、義直自身は難を逃れて上州へ落ちのび、脱走兵らと諸国を漂浪した後、明治になって東京へ出て弟の名を名乗り隠居し、明治二十二三年頃まで生き延びたという顛末が、後年ある戯作者の話として明かされている。
原典より
『誠にお気の覆 でございますが、奥様は此の十 ほど前に、坊ちゃんをお伴れになって、江戸の方へおいでになりました・・・・』—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。