早池峰山の天狗と万吉
どんな伝承か
七八十年ほど前のことらしいが、遠野に万吉という人がいた。鉛の温泉へ湯治に行くと、浴場で見知らぬ大男が声をかけ、自分は早池峰山の天狗で、山中で木の実ばかり食べていたが急に穀物が食べたくなったので遠野へ行くと言った。後日、町の東屋という酒屋に大男が来て酒を借りようとし、断られると早池峰山から銭を取ってくると言って出て行き、まもなく錆びた銭を投げて酒を買った。跡をつけると万吉の家に入った。男は毎日酒を飲み、一日に一羽の鳥を焼いて食べ、いつのまにか去った。残された小さな弓矢と菊の紋のある衣、下駄が今もあるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。