似田貝家に見えない座敷童子
どんな伝承か
土淵村字似田貝の似田貝某という人の家に、二十年ほど前、ザシキワラシが出るという噂が立ったことがある。皆が見に行ったものである。同じ村の友人で荒川という人の話に、自分も或る日行くと、家の者たちが口々に、あれあれ今座敷から玄関の方へ出て行ったとか、今こちらへ来たとか、どこそこに入ったとかしきりに言うけれども、自分の目にはとうとう見えなかったという。この人は今三十八九の極めて真面目な人で、土地には珍しい露西亜正教会の信者であり、決して嘘などは言わぬ人だと記される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。