新倉屋の入らずの間の囃子
どんな伝承か
釜石町の字沢というところは昔からの遊女町で、新倉屋という家があった。この家には誰も入ることのできない一室があったが、ある夜突然その入らずの室から、太鼓や三味線の賑やかな囃子の音が起こり、それから毎夜のように長く続いた。その頃秋田から買われて来ていた一人の女が、ある夜そっと室の内を覗いたために、中から物で目を突かれて片目になったという。これはザシキワラシの仕業で、この家には夫婦でいたのだと伝わる。五、六十年ばかり前の話で、今はこの家は無い。遠野町の松田亀太郎が語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。