大田代家の黒い臼搗子
どんな伝承か
宮守村字塚沢の大田代某という人の家にも、寝られない座敷がある。けれども不思議なことに、この家の老爺さんばかりは寝られたという。去年の秋の頃だとか、この家の土蔵の内から何者かが唸るような鳴音がし出して二、三日ほど続いたが、その頃からその座敷にザシキワラシが出始めた。丈は一尺二、三寸ほどで、ちょうど臼搗子という種類のものらしく、座敷の中をとたりと跳ね廻る。しかしワラシと言えば言えるけれども、色は黒く何だか獣のようであったと、その家の人は話したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。