山女と連れ立つ急死の若者
どんな伝承か
上閉伊郡の某村で、非常に容貌の好い一人の若者が急死した。ところがそれから二、三年経って、或る狩人がある山で、その若者が不思議な山女と連れ立って歩いているのを見たという話があった。語り手は、女は比較的無事に山に住み山男の子を産むこともできるらしいが、男は多淫の山女に縁を引かれると、初めのうちはひどく厚遇されても、精力が衰えて来ると忽ち殺されて食われてしまうと言われていると記す。その男子も生きていれば五十七、八になるが、十八、九の折に死んで山で見られたのだから、もう疾くにこの世にはいないと思われるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。