朝日の舞の翁を射て傾いた長者
どんな伝承か
森平の息子と隣家の娘は成人して夫婦になった。妻は気前よく金を使いつつ蔵を九十九も建てる長者になったが、小心な夫は妻の浪費を戒めたがった。旅の六部に尋ねると、十五日の朝日の出に真ん中の土蔵の屋根で三人の小人の翁が赤い扇で朝日の舞を舞うので、真ん中の翁の左膝をウツギの弓と蓬の矢で射よと教えられた。射ると翁は消え、家は貧しくなり、夫は妻のせいだと追い出した。妻は山中で娘の住む荒れ家に泊まり、娘が抜いた大根の跡から湧く水が酒だったので、それを町で売って大酒屋の長者となり、そこは雉子の一声の里として栄えた。落ちぶれた先夫は草履売りとして訪れ、与えられた金も無駄にして、その酒屋の下男で一生を終えたという。
原典より
夫はこゝぞと思つてウツギの弓に蓬の矢をば差しつがへて、其真中の翁の膝を射ると、左の膝は射折れて忽ち消え失せてしまった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。