海の底で回り続ける塩吹臼
どんな伝承か
利口な弟は兄の世話にならず所帯を持ったが、年越しの晩に米がなく、兄に借りに行って断られた。山越えの道で白鬚の老翁に麦饅頭をもらい、森の御堂の裏の穴にいる小人には石の挽臼となら替えてよいと言えと教わった。弟は萱一本に難儀する小人たちを助け、饅頭と小さな挽臼を取り替えた。臼は右に回せば望む物が出て、左に回せば止まる。弟は米や塩鮭を出して年を越し、元日には家や蔵や馬まで挽き出して祝宴を開いた。のぞき見た兄は臼を盗んで船で沖へ逃げ、甘い物に飽きて塩を出させたが止め方を知らず、船は塩で沈んだ。臼は今も海の底で回り続け、そのため海の水に塩気があるのだという。
原典より
弟は麦饅頭を小人共に遣って、石の小挽臼を貰って穴から出て来た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。