炭焼竈の黄金と追い出された女房
どんな伝承か
弟子にまで気前よく金を与える鍛冶屋の女房が、夫に三つの男の子と共に追い出された。旅に出た女房は奥山で迷い、炭焼き竈の煙をたよりに小屋へたどり着いて、醜い炭焼きの爺に一夜の宿を頼んだ。翌朝、小判を渡して米を買いに出すと、爺はこんな小石なら竈の辺りにいくらでもあると笑った。不審に思って竈のまわりを見ると黄金が積もっており、運び込むと小屋から溢れた。爺は自分の影法師に米を投げ与えるような人だったが、女房は嫌わずに連れ添い、黄金で家を建て並べて炭焼長者と呼ばれるまでになった。鍛冶屋の方は鎌を打てば鉈になる有様で落ちぶれ、乞食となって長者の門口に現れ、元の妻の家とは知らずに下男として一生を送ったという。
原典より
女房は爺を出して遣つた後、先刻爺が言った言葉を不審に思って、炭竈の辺に行って見ると、炭竈の辺に黄金が積まつてゐる。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。