古寺で三味線を弾く古蜘蛛
どんな伝承か
道に迷って山奥へ入り込んだ小間物売りが、谷あいに古寺を見つけ、長く使われていない炉に薪をくべて夜を過ごしていた。夜が更けると二階から足音がして、驚くほど美しい女が三味線を抱えて現れ、客人に聴かせようと弾き始めた。すると男の首に糸がかかって締め付けてきたので、箱から小刀を出して糸を切り放した。女は何度も弾き直し、そのたびに糸が首に巻き付いては男が切ることを夜半まで繰り返した。ついに男は思い切って女を刺し、女は叫んで二階へ駆け上がった。夜が明けて二階を探すと、隅で笊ほどの大きさのものが唸っており、よく見ると大きな古蜘蛛だったので、男はすっかり斬り殺したという。
原典より
するとどうしたことか不思議にも小間物売りの首筋に糸がかゝつて首がきりきりと引締められた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。