天狗の小扇で出世した博奕打
どんな伝承か
博奕に負けて帰る男が、堂のそばでさいころを転がしながら独り笑っていると、杉の木の天狗が不思議がって下りてきた。男はからかうつもりで、さいころを振れば江戸も京大阪も、転がし方次第では唐天竺まで見物できると言い、渋る振りをして、扇げば何でも叶いどこへでも飛べるという天狗の赤い小扇と取り替えさせた。天狗がさいころを掴んで飛び去ると、男は扇で江戸へ飛び、長者の娘の鼻をあおいで長く伸ばしてから、直した者に千両という立札に応じて元に戻し、千両箱を得た。次に京の公卿の屋敷で姫の尻を扇でなでて鳴り止まなくし、直せば婿にという立札に応じて音を止め、その家の婿となって大いに出世したという。
原典より
博奕打は喜ぶまいことか早速其小扇であふいで江戸へ飛んだ。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。