孫の涙で連れ戻された老母
どんな伝承か
意地の悪い嫁が、年老いて寝たきりの姑が虱を噛み潰すのを米の盗み食いだと言い立て、山へ捨ててこいと夫に迫った。夫は実の母を捨てたくなかったが、出て行くと嫁に言われ、母を背負って奥山へ向かった。泣いてついてきた九つの息子を連れ、谷の大きな平石の所で父が母を下ろすと、母は孫を抱いて泣いた。息子は木や石を見覚えておくと言って木の数を数えていたが、急に転げ回って泣き出し、父母が年を取ったら自分もここへ捨てに来なければならないのかと思うと悲しいと訴えた。父も心からそう思い、母を背負って家に戻った。祝いの膳を待っていた嫁は怒ったが、わけを聞いて言い返せず、以後は嫁姑も睦まじく、親孝行の家と呼ばれたという。
原典より
父もそれを聞いて真実にさうだと心で悲しんだ。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。