千夜通った蛇男と麻畑の茸
どんな伝承か
ある里の貧しい家で息子が奉公に出ている間、嫁のもとへ毎夜見知らぬ美男が通ってきた。嫁が真心があるなら千夜通えと言うと、男は戸をどう固めても忍び込み、九百九十九夜目に、明晩承知しなければ命は無いと告げた。姑は菊酒を飲ませて正体を見よと教え、酔いつぶれた男は大蛇の姿を現し、嫁が長刀で斬り殺した。のちに連れ合いの女蛇が夜ごと家を唸り回り、嫁は山奥の沼へ追い詰めた。沼の中で、女蛇が七月に麻畑の茸となって一家を皆殺しにすると言い、相手が、残らず採って味噌汁にし苧殻の箸で食われたら終わりだと止めるのを嫁は盗み聞いた。七月、赤い茸を残らず採って近所とその通りに食べると、三日目に沼に大蛇の屍が浮いたという。
原典より
そしてひどく酔ひつぶれて床の間一杯になつて寝るのを見ると、たうたう本性を現はして見るも恐ろしい大蛇であつた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。