船宿の化け猫から生えた南瓜
どんな伝承か
ある船宿では客に出す珍しい魚がいつの間にか盗み食いされ、嫁の仕業と疑われて嫁を何人も替えていた。ある夜、泊まった船頭が台所の物音をのぞくと、子馬ほどもある三毛猫が戸棚を開けて魚を食べており、炉端に戻るといつもの猫の姿になった。翌朝、主人について来た猫の前で船頭が昨夜のことを話しかけると、猫は喉笛めがけて飛びかかり、皆に打ち殺されて裏の竹藪に埋められた。その後、船頭の船は出ようとするたびに大荒れになった。翌年の八月、同じ宿に泊まると見慣れぬ実をつけた草が生えており、根を掘ると猫の口から伸びていた。それが南瓜の始まりで、猫の精ゆえ食あたりするのだという。
原典より
すると二才駒のやうに大きな三毛猫が戸棚の戸を開けて魚鉢に顔を突込んでむしやむしやと魚を食って居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。