六部姿で戻った長者の家の宝
どんな伝承か
ある里の長者の家に代々住んでいた三つの家の宝が、ここにいても楽しみがないと相談し、六部の姿になって諸国を巡った。だが泊まる先はどこも貧しく、嘆きばかり聞かされたので、世の中はどこも同じだと悟って故郷へ戻った。元の家は倉もなくなり、白髪の婆が一人で暮らしていた。三人は頼み込んで一夜の宿を借り、長者の頃の名残の火鉢を煙草の吸殻で磨きながら昔語りをすると、火鉢は黄金に変わった。元の身代に戻すにはいくら要るかと尋ねると、婆は七億と答えた。三人はその大きな望みに感じ入って正体を明かし、奥の間の床板をはがせと言い残して消えた。翌朝床下から黄金の詰まった壺が三つ出て、婆は前にも増す長者になったという。
原典より
それは三人の六部が其儘黄金になつたのであつて、それから婆様は前にも増さる長者となった。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。