子鬼の小槌で女殿様になった婆
どんな伝承か
婆と息子の家に隣村から嫁が来たが、やがて姑を邪魔にし、婆は汚い、米を盗み食いしていると夫に告げ口して、奥山へ捨てて来いとせがんだ。息子は嫁に逆らえず、婆を背負って奥山へ行き、萱の小屋に入れて火をつけて逃げ帰った。這い出した婆が焼け残りの火に当たっていると、明かりに誘われた鬼の子が五、六匹集まってきた。婆が股を広げて、これは鬼の子を食う口だと脅すと、子鬼たちは許しを請うて打出の小槌を差し出した。婆は小槌で千軒の町と館を打ち出し、その地の女殿様になった。薪を売りに来た夫婦がそれを知り、嫁も女殿様になりたいとせがんで同じように萱小屋で焼かれ、死んでしまったという。
原典より
婆様は子鬼から貰った打出の小槌をもつて、さあさあ此所さ千軒の町が出ろと言って、トンと地面を打叩くと、其通りぞろりと千軒の町屋が出た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。