姉の知恵で鬼に勝った弟
どんな伝承か
秋に姉弟で山へ栗拾いに行くと、はぐれた間に姉が何者かにさらわれた。弟は枝に掛かった手拭いや着物の切れ端をたどって奥山の大きな館に着いた。黒、青、赤の門にはそれぞれ鬼が寝そべって番をしていたが、弟は足を踏んでも二十日鼠と思われて通り抜けた。玄関で姉に会って葛籠に隠れたが、帰ってきた主の鬼は薄の葉の露が一つ増えたことで人間が入ったと見抜き、弟を引き出した。鬼は負けた方を食うと言って飯と炒り豆の食べ比べを挑んだが、姉が弟の椀に小椀を伏せ、鬼の豆に小石を入れたので弟が勝った。最後の木伐り比べでは姉が鬼の斧の刃をつぶしておき、弟は鬼の首を斬り落として姉と宝を持ち帰ったという。
原典より
鬼は何匿すなと言って、庭へ下りて行って薄の葉を見て、これや此薄の葉の上の露玉が一つ殖えてゐる。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。