六角牛山の女神に乳を貰った力士
どんな伝承か
青笹村に荒滝という力士があった。子供の時から小力が強く、村の祭場では常に相撲の大将で、どこへ行っても勝つ者がなかった。さらに大力になりたいと願い、遠野郷の御山六角牛山に願をかけ、冬の雪山を裸体素足で毎夜御山かけをした。雪は腰まで深かったが、精神を籠めていたので体には障らなかった。ある夜、山頂の御堂で拝んでいると、この山の主である若い女神が現れ、肩肌を脱いで白い乳房を出して飲ませてくれた。それからは毎夜のことであった。この女神は石上山・早池峰山の女神と姉妹で、一番の姉であった。荒滝は土俵で六角牛山の方を向いて四股を踏めば必ず勝ったが、江戸相撲の秀ノ山に背を撫でられて肋を折られ、病んで死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。