浄瑠璃を語り妻を殺した虎猫
どんな伝承か
遠野町の是川某という侍が、子供らを連れて櫓下の芝居小屋へ浄瑠璃を観に行った。家には妻が一人残って縫物をしていると、炉の向こうで居眠りしていた虎猫がそろそろと寄って来て、只今旦那様方が聴いている浄瑠璃を語って聞かせようかと人語を発し、絹を裂くような声で一段を語り終え、このことを誰にも話すなと恐ろしい目で睨んだ。後日、懇意の成就院の和尚がこの猫は狐と踊っていたと語る。妻がその夜の話を夫に告げた翌朝、妻は喉笛を食い破られて死んでおり、虎猫は行方知れずになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。