雨に傘を差さない掛物の女
どんな伝承か
ある長者の旦那は大の物好きだった。それを聞きつけた旅のペテン師が掛物を売り込みに来た。傘を持つ美しい女の絵で、晴れの日は傘をたたんでいるが、雨の前日には傘を開くという触れ込みである。旦那は欲しくてたまらず百両で買い、床の間に掛けて雨を待った。ところが雨が続いても女は一向に傘を差さない。だまされたと悔しがっているところへ当のペテン師が顔を出したので詰め寄ると、男は涼しい顔で、毎日何も食べさせていないなら腹が減って力が出ないのだと言ってのけた。
原典より
ペテン師はこの絵の女は天気のよい日には斯うして傘を畳んで持って居るが、明日雨が降ると謂ふ前の日にはこの傘をひろげてさして居る。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。