血を溜めた上五明の一つ石
どんな伝承か
上五明の農山には二本松があり、その下の日蔭という所に大きな石がある。昔、五明の石工がこの石を割って使おうと、割矢を打ちこむ穴をいくつも掘ったが、日が暮れたので続きは翌日にして家へ帰った。夜、ひと眠りすると、穴を掘ったあの石が泣き声で何度も話しかけてくる。目を覚ましても誰もおらず、考えこむうちに夜が明けた。急いで仕事場へ行くと、いくつも掘ったはずの穴が一つしかなく、その穴には血がいっぱいに溜まっていた。石工の知らせに村役人は相談して石を割ることを禁じ、神主にお祓いをさせて一つ石と名づけて残したという。
原典より
この穴を見ると血が一杯溜っているではないか。—— 坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説(坂城町(編)・坂城町誌)
『坂城町誌 上巻(民俗編)――伝説』は、長野県坂城町の町誌上巻(自然編・民俗編)から、民俗編の数章を抜き出したものである。祟る所や神罰、ヒトダマ・狐火などの怪異、魔除け、植物の禁忌といった俗信を地区ごとの事例として番号を付けて並べ、続いて甘利さま、天田長者とほうず池、苅屋原の七不思議、貉和尚、夜泣き石など三十余りの伝説を収める。伝説の章は調査員の調査をもとに、以前の調査記録も二、三篇併せて載せる。