ひと沢足りずに去った大蛇
どんな伝承か
むかし、大沢に大きな大蛇がいたという。この大蛇が棲むには百の沢がなければならぬほどの大きさであった。大蛇はあちこちに自分の棲みかを探し歩き、境川の大沢までやってきて、ここは大沢だから沢も深く、いかにも住み心地がよさそうだと思い、この大沢に落ち着こうと決めた。やがて大蛇はいよいよお産をすることになり、産の床についたが、残念ながら大沢は九十九沢しかなく、ひと沢足りなかった。大蛇はたいそうがっかりした。そしてある朝、真っ黒な雲がたなびいたと思うと、その雲に乗ってどこかへ立ち去ってしまったということである。
原典より
むかし、この里にすむ女の人が、麓山さまにわらび採りに行ったど。—— 富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説(富岡町(編)・富岡町史)
『富岡町史 第3巻(考古・民俗編)――昔話と伝説』は、福島県富岡町の町史のうち考古・民俗を扱う巻で、ここにはその第九章「昔話と伝説」が収められている。昔話の節は昭和五十八年五月の福島県教育委員会による文化財基礎調査のまとめに町の既刊の話集から数編を加えたもので、麓山の白蛇や、大原の大吉・金平六など名のある狐の話が目立つ。伝説の節には朝賀城哀話、仏浜、戊辰戦争、鉱山、北風薬師などを収め、各話に伝承者の地区と名を添える。