雨を知らせて傘を出す狸
どんな伝承か
京都の古本屋の女主人の話では、一家は以前、今の店から少し上手にある大きな古い借家に住んでいた。住む人が次々に逃げ出すので狸屋敷とも化物屋敷とも呼ばれ、家賃がひどく下がったのを、父の八太郎が構わず借りたのだという。前の住人は、夜に炭団が火の玉になって転がってきたので逃げ出したと話した。一家が住むうちに、物が消えたり現れたりする怪異が起こり始めたが、害はなく、むしろ役に立った。誰かが出かけるとき、晴れているのに雨傘が出てくるので片付けて出ると、その日に雨が降る。逆に雨支度をすると傘が消え、別の傘で出ればからりと晴れる。やがて家族は晴雨の見当に重宝したという。
原典より
又家族の誰かが餘所行きをする時に、突然と雨傘が出て来ます。—— 動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。