北国での死を寺に告げに来た僧
どんな伝承か
享保の頃、加賀金沢浅野町の駕籠舁き山屋藤兵衛は、武州深谷の九兵衛と組んで、総泉寺の病んだ老僧を京へ送る仕事を請けた。老僧は道中も駕籠の中で寝食し、言葉も少なく風変わりだったが、金は惜しみなく使った。越前の橋立で休んでいると、白い犬が一散に駆けてきて駕籠に飛びつき、老僧の喉をくわえて引き出す。一声叫んで死んだその体は、古い狸の屍に変わっていた。二人が総泉寺へ戻って事情を告げると、和尚は、十日ほど前にその僧が現れ、北国で犬に命を落としたので弔ってくれと言って消えた、と語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。