蚊帳の寸法を測る美しい女
どんな伝承か
『金沢古蹟志』は、金沢の町にあった藤田氏の屋敷に、枕返しの出る一間があったと記す。ある夜、五人の若者が明かりを灯したまま語り合いながら眠ったところ、五人ともいつのまにか頭と足が逆になっていた。またある夜、泊まり番の男が蚊帳の中にいると、唐紙と障子を静かに開けて美しい女が入り、蚊帳の外にひざまずいて指で寸法を測り、そのまま出ていった。のちにこの女は主人の草履取りの前に立って笑いかけ、草履取りは気を失い、患ったすえに死んだという。
原典より
夜きちんと寝たにもかかわらず、朝起きてみると枕が逆になっていたり、思わぬところに枕が飛んでいたりすることがある。—— 暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。