人を水に引き込む小さな水虎どうまん
どんな伝承か
『本草啓蒙』などが伝える水の怪。備前岡山では「どうまん」、周防では「ぜにがめ」と呼ぶ、一寸ばかりの小さいが甚だ強い水生のものがいる。赤色に黒斑があり、水浴びをする人がたまたまこれに出くわすと水中へ引き込まれてしまう。河童に引き込まれるというのは、多くはこの生き物の仕業だという。出雲の方に多く、土地の人は見つけるたびに捕えて殺すといい、京では見かけないとされる。河童すなわち水虎の正体をめぐって語られた一節である。
原典より
朱態備前岡山にては、どうまん、周防にてはぜにがめと言ふが……なり—— 井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
井上円了 妖怪学講義(井上円了 著・平野威馬雄 編)
『井上円了 妖怪学講義』は、明治期に哲学館で講じられた井上円了の『妖怪学講義』から要所を選び、平野威馬雄が現代の文章に改めて編んだ抄録である。狐憑きや化物屋敷、怪火、幽霊、コックリなどを題材に、円了が古書から抜き出した記事、各地から寄せられた報告、円了自身の現地での調べを収める。原著の八部門のうち理学・心理学・宗教学・雑の四部門を章に立て、序で研究の経緯と分類を、結びで編者の見方を述べる。