御幣を叩きつける岩木山の夜間登拝
どんな伝承か
青森県の津軽平野の村々では、八月朔日の夜明け前の深夜に、十五、六歳の若者が御幣を捧げ、松明を手にして岩木山に登る風習があった。七月三十一日の出発に先立って若者はそれぞれの村の氏神に参拝し、同じ村から登る者は一団となって岩木山麓の岩木神社へ行く。御幣を持ち、背に餅と御神酒を負い、賽銭を用意して行くのである。社頭で夜の更けるのを待ち、八月朔日になると同時に山頂へ向けて出発する。頂上に着くとただちに奥宮へ行き、御幣の竹竿が砕けるほど奥祠の屋根に叩きつけ、姓名を声高に名乗って着到を神に告げた。これが村の成年式であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。