釜石の船下ろしと三所の供え餅
どんな伝承か
岩手県釜石地方の船下ろしでは、まず大工棟梁が前日から弟子一人とともに船中にこもって潔斎する。次に神職を迎え、棟梁と神官だけが船屋形の中に入って着座し修祓を行い、船霊を封じ祭る。白米、クルミ、ガラ、昆布、豆、錫、鮮魚などを供え、船主も船頭も屋形に入って船霊を鎮め、海上安全と大漁を祈禱する。夜明けの満潮を見計らって船を下ろし、このとき初めて舳・船霊・艫の三か所に餅を供える。舳は金神、艫は山の神といい、金神と船霊には三階一重の鏡餅、山神には四寸ほどの円餅十二個を供えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。