鍛冶の翁が童子となる八幡出現
どんな伝承か
宇佐八幡が姿を現したいきさつについて、『扶桑略記』に収められた縁起文はこう伝える。豊前国宇佐郡の厩峯と菱潟池のあいだに、ひどく不思議な鍛冶の翁がいた。大神比義という者が穀物を断って三年のあいだこもり、御幣を捧げて、もしあなたが神ならば私の前に姿を現してほしいと祈った。すると翁は三歳の子どもの姿となって現れ、自分は誉田天皇すなわち八幡の神であると託宣したという。著者は、この神の御正体が黄金とされることなどから、九州の鋳物や冶金の技と深く結びついた神だと推測している。
原典より
宇佐八幡の出現に関しては『扶桑略記』所収の縁起文に豊前国宇佐郡厩峯菱潟池の間に、鍛冶翁あり、はなはだ奇異なり、これによりて大神比義、穀を絶ちて三年籠居す。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。